有次の鎌形薄刃包丁 和包丁の話

有次の薄刃包丁

我が家では有次の鎌形薄刃包丁を使っています。
上製で長さは5.5寸。16.5㎝と短めです。

京都の錦市場商店街にある有次の店舗で購入したものです。
購入すると30分くらいかかりますがその場で刃付けをしてくれます。

お店は京都ですが、有次の包丁は 「有次と庖丁」江 弘毅 (著)によると主に堺で作られているそうです。

有次の薄刃包丁にはいくつかの種類があります。私の家では鎌形の薄刃包丁を使っていますが、通常の薄刃包丁や両刃の菜切包丁などがパンフレットに掲載されています。
また、霞包丁でも更に鋼材の種類ごとに「上」、「特製」、「登録」などがあるほか、家庭向けの平常一品というシリーズもあります。

上製は青紙、特製は白紙が使われています。

用途などを告げ、お店の人とお勧めの包丁を選べば良いと思います。お店に在庫が無ければ数カ月かかりますが作ってくれるそうです。

洋包丁はミソノのUX10というシリーズを使っていますが、両刃と片刃の違い、鋼材の違いなどもあり切れ味が全く違います。野菜の煮物を作ると舌触りの違いに驚くと思います。

家庭で扱いの難しい和包丁を使う人が少ないながらも一定数いるのは、やっぱり和包丁ならではの切れ味を好む人がいるからなんだなと、有次の薄刃包丁を使ってみると洋包丁派だった私も妙に納得してしまいました。

和包丁の種類

「和包丁」には、薄刃包丁(菜切包丁)、出刃包丁、柳刃刀、貝裂き包丁などがあります。
その他には、切付包丁、はも骨切り包丁など用途に応じて様々包丁がありますが、一般家庭ではあまり使われていません。
和包丁の特徴は、
  • よく切れる
  • 身離れが良い
  • 錆に弱い
という点です。

和包丁は片刃で刃先が鋭角なので切れ味良く素材断面の組織を崩さずに切れるため美しい切断面になります。また身離れが良いためきざむ動作が素早くできます。
ただ、洋包丁とは違い炭素鋼が使われているためステンレス系の素材が使われている洋包丁と比較すると取り扱いは面倒です。

良く使うのは「薄刃包丁」。これだけでも良いといえば良いのですが、魚を調理する機会が多いのであれば「出刃包丁」、「柳刃刀」、「貝裂き包丁」などを必要に応じて購入してください。普通「薄刃包丁」の使用頻度が普通は一番高くなりますね。

和包丁の産地

和包丁の産地として有名なのは堺ですね。他にもいろいろありますが、ここでは我が家で使っている包丁に土佐打刃物もあるのでそちらも併せて紹介したいと思います。

堺打刃物

和包丁の生産地として最も有名なのは堺です。大阪府堺市周辺において、特定の製造方法で生産される包丁や鋏などの刃物類を堺打刃物といいます。
特徴は分業制であるということ。製造工程は大きく分けて鍛冶、研ぎ、柄付けの3工程があるのですが、それぞれの専門の職人が各工程を担当しており、一人の職人が全行程を担当することはありません。

土佐打刃物

その他有な産地として高知県(高知県香美市・南国市・須崎市・土佐市・いの町)があり、この地域で特定の製造方法で生産される刃物類を土佐打刃物といいます。土佐打刃物の特徴は、堺打刃物とは異なり鍛造から刃付け、仕上げまでを職人が一貫して行う点です。自由度が高く「自由鍛造」とも呼ばれています。

霞包丁と本焼包丁

和包丁の構造ですが、本焼と霞に大きくわかれます。

鋼と軟鉄をくっつけて作った包丁を霞包丁と呼びます。特徴は研ぎやすい点と割れにくい点です。あとは本焼包丁より安価なことです。家庭で使われている和包丁は霞包丁の場合がほとんどですね。

鋼だけで作られた包丁を本焼包丁と呼びます。特徴は切れ味の持続性。割れやすい上に大変硬いため研ぎにくく、取り扱いも難しいです。また非常に高価でもあり1本十数万円からみたいな感じなので家庭では包丁マニアみたいな人以外は使っていないと思います。

包丁に使う鋼材

鋼材は「青紙」、「白紙」、「黄紙」の3種類あります。あと錆にくいステンレス製の鋼材として日立金属には「銀紙」、「ZDP189」という鋼材があります。「青紙」とか「白紙」の色の意味ですが、これは日立金属の安来工場で作られていた鋼の種類を見分けるために使われていた色紙の色に由来します。

それぞれの特徴ですが日立金属のサイトにあるパンフレットから引用すると、
白紙、黄紙は基本的には不純物を極力低減した純粋な炭素鋼であり、適切な鍛錬と熱処理によって切れ味良く、砥ぎ易い理想的な刃物を製作することが可能です。 青紙はタングステンやクロムを添加して熱処理特性及び耐摩耗性を改善した鋼種で永切れする刃物になります。いずれの鋼種も炭素量によって細かく分類しており、靭性を要求される用途には炭素量が低く、切れ味や耐摩耗性が要求される場合には炭素量の高い鋼種が選択されます。鋼種選択に当たってはご使用の用途に合わせて適切な炭素量の鋼種と熱処理を選択することが必要です。ステンレス鋼系の刃物鋼につきましては、いずれの鋼種もクロムを12%以上含んでおり、錆にくいことから一般家庭用包丁などさまざまな用途にご使用いただいています。(日立金属「YSS高級刃物鋼」より引用)
YSS高級刃物鋼(PDF形式)(日立金属)

これを読んでもよくわららないという場合は、切れ味と価格を重視するなら白紙、切れ味の持続性、粘り(刃こぼれしにくい性質)を求めるなら青紙を選ぶと良いです。硬度は同じくらいなのですが、価格は製造に手間がかかるので青紙のほうが高価です。硬度は60~です。

ロックウェル硬度

工業材料の硬さを表す尺度の一つで記号はHRです。
日本工業規格では JIS G 2245 でロックウェル試験が規定されています。

家庭での和包丁選び

選び方は洋包丁とほぼ同じです。使われている鋼材、包丁としての完成度、プロが使っているものかどうかなどの観点でいろいろ調べてみて、そのあと実際にお店に足を運び選ぶのが良いと思います。手作り感の強い和包丁の場合は1本1本使い心地や出来が微妙に違うといわれていますので、実物をよくみて実際に握ったりして自分にぴったりのものを選ぶと良いと思います。夫婦で同じものを共用する場合はどちらかが妥協する必要があるのですが。

包丁の長さ

家庭向けで使う場合はプロが使うような長い和包丁でなくても構いませんし、あまり長すぎると一般家庭では使いずらいかもしれません。旦那が持っていた和包丁を使っているのですが上述した有次の薄刃包丁が5.5寸、出刃包丁が5寸です。あと昔から使っていたらしい5寸くらいの牛刀がありますが私のペティナイフとかぶっているいるのでこの包丁はあまり使っていません。

和包丁と洋包丁の価格

和包丁の場合は、洋包丁と比較して安価でも、そこそこ切れ味の良い包丁が売られていますが、ステンレスの洋包丁の1~3,000円くらいの安価なものは切れ味の悪いものが多いです。
和包丁で良いものは堺で作られた包丁であることが多く、和包丁で有名な「有次」や「正本」の包丁の一部も堺で作られた包丁といわれています。

和包丁も洋包丁も家庭で扱うくらいの長さのものであれば大体1万円以上になると比較的切れ味の良いものになってきます。

我が家で使っている包丁ですが産地やブランドも様々で、3万円くらいしたらしい「有次」の鎌形薄刃包丁の他、近所で買った土佐打刃物の出刃包丁と牛刀があります。こちらは2万円前後だったそうです。ということで、私の購入した洋包丁よりも高価な包丁ですね。

鋼材選び

包丁の構造は霞包丁で、鋼材は薄刃包丁と出刃包丁の鋼材は青紙2号、牛刀は青紙スーパーです。家庭向けの包丁でわざわざ高価な鋼材を使う必要があるのか少し疑問に思うこともあって白紙2号で十分であるような気もしています。
また、単に鋼材の種類で選ぶのではなく、焼き入れ操作などそれぞれの製造工程における技量の差により製品の出来に違いがでますので、きちんと作られた包丁を選ぶことが鋼材選びよりも大切だと思います。

和包丁と洋包丁の使用感の違い

私は結婚するまでは洋包丁しか使ったことがなかったので、和包丁はかなり扱いずらく感じました。家庭で初めて使うという場合は、ネットでもいろんなサイトがあるし、包丁の使い方みたいな本もあるのでそれらを良く読んで自分なりに使いこなせるように練習するのが良いと思います。慣れてもそんなに扱いやすいとは思えないのでやっぱり洋包丁が主流になるのがよくわかりますね。

あと和包丁は手作り感が強くものによって完成度に差があります。刃の部分は勿論ですが、刃側の柄の先の部分から水が染み込みやすそうな作りのものが我が家にあったりするので、「選ぶときは包丁の隅から隅まできちんと見たほうが良いよ」といいたいです。

研ぎ

包丁の扱い方でもう1つ大切なことは「研ぐ」ことです。日ごろは自分で簡単に研ぎ、年に数回程度プロに研いでもらえば良いとは思うのですが、こちらについては、別の機会に書きたいと思っていますが、私自身そんなに研ぎが上手なわけでもないので、書くとしても先の話になりそうです。

砥石

砥石は人造のもので、シャプトン 刃の黒幕を使っています。荒砥 #220、中砥 #1000、中仕上砥石 #2000、仕上砥 #5000を持ってますが、よく使うのは、#1000、 #2000、 #5000です。

洋包丁について

洋包丁ではミソノUX10シリーズの牛刀とペティナイフを使っています。
洋包丁については、「洋包丁の選び方 ミソノUX10」をご覧ください。

参考

有次 鎌形薄刃包丁
京都有次 鎌形薄刃包丁上製










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