最も高価な天然繊維ビクーニャ(vicugna)

神々の繊維と呼ばれかつてはインカ皇帝だけが使用してたと言われるビクーニャ(vicugna)。天然繊維のなかで最も繊維の径が小さく繊細、その希少性も相俟って最も高価な繊維として取引されているだけでなく、ワシントン条約でも取引が制限されています。

ビクーニャは、偶蹄目ラクダ科に分類される動物で、南米のペルーなどの標高の高い地域に生息しています。

毛布やブランケット、コートやニット、スーツなどで使われいて、原毛の長さは30~40ミリ、直径11~14μmとカシミヤとよりも更に細い繊維です。

最高級のブランケットやストール、コートやニットなどを選ぶ場合、ビクーニャ製品にすれば間違いないと思いますが価格は驚くほど高価。2000年代に、原毛でkgあたりの価格が4~5万円くらい、糸になると10万円くらいすると言われていました。

ビクーニャですがコート地くらいしか触ったことがないのですが、感触としては上質なカシミヤを更にやわらかくした感じで、さらさらと溶けていくような繊細さがあります。光沢は生地の仕上げ方によって違いますがカシミヤとさほど変わらないか少し劣る感じもしました。流石に値段が値段なのでサンプルをみただけで購入には至りませんでした。
上質なカシミヤの生地と比べて10倍くらいの値段がついていましたが、そこまでの魅力は感じませんし、コストパフォーマンスを考えて購入するなんてものではないんでしょうね。

ワインで言えばロマネコンティやスクリーミング・イーグル、DRCのモンラッシェやコシュ・デュリのコルトン・シャルルマーニュみたいな位置づけなのかもしれないですね。

ビクーニャ製品の価格

オーバーコートの生地

製品価格になるとそれなりに上質なカシミヤの10倍くらい。アニオナ(AGNONA)のビクーニャのコート用の生地ですが、着分210万円(2008年時点)と日本の老舗マーチャントのブログで紹介されていました。210万というのは生地代だけです。
スーツだと紡毛の生地ではなく、スパンビクーニャという梳毛の生地を使うことになると思うのでなお希少なものといえます。

ブランケット

ロロピアーナ(Loro Piana)のビクーニャ製品は雑誌などで時々目にします。
ロロピアーナのビクーニャのブランケット。ロロピアーナのサイトでみてみるとサイズ200cm×150cmで1,506,000円でした(2018年10月時点)。

ちなみに、アニオナやロロピアーナはカシミヤでもトップクラスのメーカなのでカシミヤ製品も高額です。

毛布

その他では、心斎橋西川では、シングルロングの毛布がサイズ150×210cmで3,000,000円(税抜)、ニッケ商事では、ビキューナ混毛布(よこ糸(毛羽部分)にビキューナ60%・カシミヤ20%・ウール20%、たて糸:ウール100%)は、サイズ150×210cm、証明書付・桐箱入りで3,500,000円(税抜き)です。

日系のメーカーの毛布を見ると、ロロピアーナのビクーニャのブランケットの1,506,000円が安く思えるので不思議です。

希少性によるところが大きいビクーニャの価格

ビクーニャですが数十年前は今ほど高くはなかったし、カシミヤより少し上の扱いだったと聞いたことがあります。乱獲された結果、1960年代には1万頭を下回る数にまで生息数が減少したこともあり、希少性が増し現在のような位置づけになりました。近年は政府主導による生体管理が行われており生産量自体は増えてきているようですが、価格は高止まりしたままです。生産量がどんどん増えてくれば価格が下がりそうなものですが、供給する会社も限られていますし、そういったことは当面なさそうです。

ビクーニャの絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)での位置づけ

ワシントン条約附属書(動物界)平成29年10月4日から発効 では、ビクーニャ(アルゼンチン(フフイ県及びカタマルカ県の個体群並びにフフイ県、サルタ県、カタマルカ県、ラ・リオハ県及びサン・フアン県の半ば人に管理された個体群)、チリ(プリメラ州の個体群)、エクアドル(すべての個体群)、ペルー(すべての個体群)及びボリビア(すべての個体群)に限る。)は、附属書Ⅱに掲げられています。

付属書Ⅱには以下のような種が掲げられています。
(a) 現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、その存続を脅かすこととなる利用がなされないようにするためにその標本の
取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種
(b) (a)の種以外の種であって、(a)の種の標本の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種

ビクーニャの取引については、注書きがあり、生きているヴィクーニャから刈り取られた毛が由来となっている場合に限り、その毛や派生商品の国際取引を認めることを専らの目的とする。このような毛に由来する商品の取引は、以下の条件に合致する場合のみ、可能である。

1.ヴィクーニャの毛から織物や衣類を製造しようとする場合、ヴィクーニャの管理及び保護のための協定の署名国であるヴィクーニャの原産国(訳注:アルゼンチン、チリ、エクアドル、ペルー、ボリビア)間で採択された「ヴィクーニャ・原産国」という表示を用いることについて原産国の関係機関から承認を得なくてはならない。
(以下略)

とあり、カシミヤ製品とは違って簡単に個人輸入できるといったものではなさそうです。

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」による譲渡規制

譲渡規制については環境省のサイトによると以下のようになっているようです。

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(以下「種の保存法」という。)第4条第4項の国際希少野生動植物種に指定されており、「個体、剝製、毛、皮、毛皮製品※1」等について、第12条に基づき譲渡し等※2が原則禁止されています。ただし、規制適用前から所有されているもの、適法に輸入されたもの等については、種の保存法第20条に基づき、登録機関である一般財団法人自然環境研究センターに申請をして登録を受け、交付された登録票を添付することで、譲渡し等が可能となります。
 また、譲受け又は引取り(買う、借りる、もらう等)を行った方は、種の保存法第21条第5項に基づき、30日以内に同センターへ届出を行う必要があります。
※1:毛を材料として製造された衣類、装身具、調度品
※2:譲渡し若しくは譲受け又は引渡し若しくは引取り。具体的には、売る、買う、貸す、借りる、あげる、もらう等。
(環境省サイトより)

罰則規定 

なお、以下のような罰則規定もあるようなので、取引の際には注意する必要があります。
譲渡し等の規制の対象となっている個体、個体の器官、個体の加工品、個体の器官の加工品について、登録を受けないで譲渡し等を行った場合、種の保存法第57条の2により、5年以下の懲役又は最大500万以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)、また、譲受け又は引取り(買う、借りる、もらう等)を行った後30日以内に自然環境研究センターに届出を行わない場合は、第63条により、30万以下の罰金となります(環境省サイトより)

カシミヤ製品について

ビクーニャ製品より気軽に入手できるカシミヤ製品の選び方については、
毛布の選び方 カシミヤ毛布の特徴と使用感 お勧め毛布素材
カシミヤの選び方 John Laingの手袋とジョンストンズのマフラー
で書いています。

参考