カシミヤはウールよりも随分高価です。それにカシミヤ100%の品質表示であっても価格帯の幅はとても広く「一体何が違うの?」と疑問に思ったことがある人は結構いるんじゃないでしょうか。
近頃ではカシミヤ100%の製品を無印良品やユニクロでも買うことができます。
耐久性や風合いはカシミヤを扱っている有名どころとは違いますが肌に触れたときの感触はカシミヤ特有のものといえます
もはやありふれたものになってしまった感のあるカシミヤですが、良質の製品を購入しようと思ったとき、どこで購入するのが良いのか少し悩むかもしれませんね。
カシミヤ製品を扱っている有名どころには、イタリアだとAGNONA,BRUNELLO CUCINELLI,Cruciani,Loro Piana,maloなんかが有名。大手メゾンの商品が好きならHermes,CHANELなどで好きなデザインのものを選べば良いです。
スコットランド製がいいならBarrie、Johnstonsなんかもあります。スコットランド製といえば、アーガイル柄のニットが有名なBallantynがありましたが、今ではイタリアのブランドになりましたし、スコットランドの工場も閉鎖されました。
昔は(といっても2、30年前)は、カシミヤといえばスコットランド製がそれなりに多かった気がしますが、近頃はそこそこの価格帯になるとイタリアのブランドばかりが売られているイメージがあります。イタリアのブランドは値段はやや高めですがマーケティングに力を入れているからなのかな。
初めてカシミヤ製品を購入する場合、ユニクロや無印良品で試してみるって考えもあるかもしれないけど、良質なカシミヤ製品が欲しいのであれば、そこそこの値段のものを試してみることをお勧めします。予算にそんなに余裕がなければ小物にすれば良くて、それでも十分カシミヤの良さは解かると思います。
それに高品質のカシミヤ製品をちゃんと手入れしながら使ってみてはじめてわかることもあります。風合いの変化や耐久性、体へのフィット感や動きやすさ、厚みなどちょっとしたことなんだけどそれが積み重なると全然違う製品だなぁともしかしたら感じるようになるかもしれません。
極端な話ですが、定価で10万円以上のニットと1万円くらいのものを両方買って試してみるとそれなりに違いがわかるようになるってことだと思います。もし違いを感じないようであれば安いほうを使った方が得って結論もでるしそれはそれで良い気もします。
cashmereの基礎知識
品質表示のタグには「カシミア」ではなく「カシミヤ」と表記されています(家庭用品品質表示法で表記が決まっています。)。カシミヤは、カシミヤ山羊から取れた毛のことです。カシミヤは羊の毛ではありません。
カシミヤの原産地と原毛の品質
カシミヤヤギは、中国、モンゴル、イラン、アフガニスタンなどで飼育されています。最高品質のカシミヤは中国内モンゴル自治区から産出されるもので、イラン、アフガニスタン、その他の中東諸国のカシミヤは繊維の直径がやや太めだと言われています。勿論中国内モンゴル自治区産出のカシミヤのすべてが最高品質ではありませんが。
繊維の直径の話をしましたが、カシミヤの原毛では、繊維の直径、長さ、色が重視されます。色は白度のことです。
その他、異物が入っていたり、原毛に太い毛がたくさん混じっていないかといった観点でも評価されます。
カシミヤの平均直径ですが13.5μm~19.0μmくらいです。
毛の長さですが、長いほど良いです。ウールと違ってカシミヤはあまり長くありません。
長いもので50mm、平均する20mm~40mmくらい。
長さが平均34mm以上あって直径が平均14.5μmくらいのものだと高級品です。
原毛レベルでどの程度のクラスのものを使っているのかといったことは最終製品に決定的な影響を与えるくらい重要なことであり、価格の妥当性を判断するための指標の1つにもなります。
ただ、その後の工程で手を抜くとせっかくの良い原毛も台無しになってしまうので、あくまでも重要な要素の1つになります。
選別・洗毛・整毛工程
カシミヤは、繊維の直径、長さ、白色度、不純物の混入具合により品質が決まり選別されています。まず、土、砂、ふけなどを落とします。
その後、洗毛工程を経て整毛されます。
カシミヤにはうぶ毛と刺毛があります。さし毛をきちんと取り除くことがとても重要です。
染色
カシミヤを染色する場合ですが、ワタ、糸、製品のいずれかの段階で染色されます。ワタの状態で染めることをトップ染め。
糸で染めることを糸染め。
製品にしてから染めることを製品染めと言います。
カシミヤの紡績で有名なTODD&DUNCANのサイトでは、トップ染めをしている旨が記載されていますが、日本では梳毛の場合は糸染め(後染め)することもあるようです。トップ染めのほうがコストがかかると言われています。
カシミヤの色合いの美しさは、先染めしたワタを如何にブレンドするかみたいなところに秘密があって、ブレンドする技術が高いと素晴らしい色合いに仕上がります。
そのためには原毛が白に近いほうが有利なわけで白色度の高いカシミヤほど貴重ということになっています。
紡績
撚りの強さによって風合いが違ってきます。そのあたりの知識は重要です。同じ原毛で比較すると撚りを甘くすると風合いが良くなりますが耐久性が劣ってしまいます。ただ、より長い原毛を使うことにより、同じ撚りをかけた場合で比較すると、耐久性は向上します。
長い原毛を使用することにより、風合いと耐久性のバランスをより高い次元で実現できるようになるわけです。
国別の傾向で言えばイタリア製のほうがスコットランド製よりも撚りは甘めです。
梳毛と紡毛では生産工程が全く違います。詳しく知りたい場合は記事下のリンク先に紡績メーカーのリンク先を貼っていますので、そちらを参考にしてください。
これで、カシミヤの基礎知識の話はおしまいです。
カシミヤ製品の選び方
カシミヤの商品で欲しいものがある場合、品質についてお店でいろいろ聞いてみると良いと思います。このブログに書いてある程度の基礎知識があるだけで商品選びはずっと楽になります。
商品にどのレベルの糸が使われているのかは品質表示ラベルには書かれていないので、それぞれのブランドのサイトで調べたりお店の店員に聞いてみると良いと思います。
ちゃんとしたお店であれば意外と喜んでこのあたりの話をしてくれます。
高品質のカシミヤ製品を取り扱っている場合、ちゃんと自社製品のアピールポイントを説明した上で信頼して買ってもらいたいみたいなところがあるんじゃないかなと思いますし、自分の売ってる商品にやっぱり自信を持ってるんだと思います。
比較的安価な商品を売っているお店では「〇〇(高級ブランド)と同じようなものですよ」とか「ブランド料で高いだけです」みたいな話をする店員もいますが、他社との比較もいいけど、自社の商品がどんなに良い原毛を使っていて染色にどんな工夫をしてるのかといった具体的な話ができなければ、やっぱり信頼されるお店にはなれないんじゃないかなと思ったりしますし、アピールすることが少ないから価格面しかアピールできないんだろうなと思ってしまいます。勿論価格も大事なのですが。
原毛はどんなものを使っているのか、それにどこの糸を仕入れて作っているのかなんてことがちゃんと説明できないお店で買うのは、自分の買っているものが何かわからずに買うことになるわけで、やっぱり気持ち悪いですよね。
私の使っているカシミヤ製品
カシミヤ製品の紹介ということでここでは比較的購入しやすい小物から2点私が使っているものを紹介したいと思います。John Laingの手袋
スコットランド製の割に少し甘めに撚られた感じの糸を使ってるこのニット製の手袋は、しっとりした優しい風合いが特徴。保温性にも富んでいてとても快適に過ごせます。John Laingは、2006年にBarrie Knitwearに買収されています。
Johnstonsのマフラー
紡毛のマフラーです。Johnstonsといえばストールが有名ですね。Johnstonsといえば過不足のない品質というイメージです。最高級品と比べるとどうしても少し硬めの風合いだし、比べると気にならないといえば嘘になるけど、実用上はそんなに気になることもないし、使っているうちに風合いも良くなります。温かいしこれで十分かなと最近は思ってたりします。
それなりの品質のカシミヤ製品は決して安くはありません。
他の繊維でも言えることかもしれないけど、染料によって同じ製品でも風合いが微妙に変わるような気がしています。あくまでもこれは私の感覚ではということなりますが。
そういうこともあって、例え色違いであっても触って確認して購入したほうが失敗は少ないかもしれませんね。
ソックスについてもルームウェアにはなりますがcashmereの製品が売られていて私はイギリスの靴下メーカのcorgiのものを使用しています。(詳細は「corgiの靴下」参照)。
その他の素材としてウールについては、「JOHN SMEDLEY(ジョンスメドレー)の13.5 Micron Cardigan~ウールの話~」で書いていますのこちらも併せてご覧ください。
(参考)
- カシミヤ・キャメルヘア工業会(CCMIウェブサイト)
- 東洋紡糸 (東洋紡糸ウェブサイト)
- TODD & DUNCAN(TODD&DUNCANウェブサイト)
- John Laing(John Laingウェブサイト)
- BALLANTYNE/BERK CASHMERE AVAILABLE AGAIN(英語)(Permanent Styleウェブサイト )
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